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【憲法改正】各党党首に訊く 北神圭朗

文:松岡宏明(編集部)

憲法制定権は国民の強い権利
必要な改正をきちんと国民投票にかけるべきだ

  私、無所属の議員なんですけれども、憲法審査会には与党枠で入っているんですよね。こう驚きの告白をするのは無所属の衆議院議員で旧民主党出身保守系無所属が構成する院内会派有志の会(※)を事実上の幹事長役として取り纏めている北神圭朗議員だ。

 しかし、驚きはそれだけにとどまらない。北神代表は、日本維新の会と国民民主党も与党枠だと畳みかける。これはいったいどういうことなのか、日本維新の会も国民民主党も与党ではない、もちろん北神代表は無所属なので与党議員ではない。なぜ、与党議員でもないのに憲法審査会は与党枠で入っているのか、その理由は憲法審査会での立憲民主党と共産党の横暴にある。

 憲法審査会の野党枠は立憲民主党と共産党が仕切っていて、野党枠から出ようとする改憲派の議員に対しては最初から審議にさえ顔を出すなと迫ってくる。そのため、有志の会の北神議員や日本維新の会や国民民主党の議員のように真面目に建設的に憲法改正を議論したい議員は憲法審査会には野党枠ではなく与党枠として憲法審査会に参加している。

野党第一党という数の力を背景に野党というコップの中で多数者の横暴をきわめる立憲民主党やそれと手を結ぶ共産党の体質の一端を垣間見たような気分であるが、実は北神氏、民主党で初当選した時から改憲派で初当選当時は日本国憲法に関する調査特別委員会に所属していた。

かつての民主党の憲法改正への姿勢や内実について、当時ですら民主党は憲法問題では今と同じ駆け引きばかり、また党内で憲法改正議論をちょっとでも進めようとしたり、独自の憲法改正案を出そうとしたりすると、それが党内で止められてきた、と北神氏は振り返りつつ、そうしたことも無所属となった一因だと述べた。

 有志の会の所属議員は全員、民主党で初当選した議員であるが、政権から下野した民主党・民進党が共産党との連携を強め、左傾化・反改憲化路線へと進む中での政党再編で無所属に転じた議員であり、そうしたこともあり有志の会は無所属議員の集まりながらも政策理念や憲法観は共有されている。

 憲法は時代情勢に応じて必要ならば改正すべきであり、現状においては憲法9条2項削除によるフルスペックの自衛権、緊急事態における国会機能の維持、これが有志の会の憲法観と改憲案である。

 改憲の具体的な案としては9条については侵略戦争を禁じる1項を残し、2項を削除するのみとするものである。これは国家固有の権利としての軍隊は当たり前のものであり、国民の治安維持を目的とし、場合によっては国民の権利を制約することもある警察とは異なり、外国に向けるものである軍隊については国際法の制約に服するのみであり、それを憲法に書き込む必要はない、という考え方に基づくものであり、それは憲法のグローバルスタンダードでもある。

 緊急事態における国会機能の維持については、厳格な手続きと司法による事後牽制の下での議員任期の延長を軸としているが、これは緊急事態であろうが行政が暴走しないために国会による監視が維持されていなければならない、衆議院の任期満了と緊急事態が重なってしまうと衆議院が不在となり現行憲法上に規定されている参議院の緊急集会のみでは内閣独裁・内閣の暴走を防ぐことはできない、という危惧に基づいている。

 これが杞憂ではないとして、実際にコロナ対応の際に要請という形の命令、根拠がよく分からない曖昧なことでの私権制限がされたことを例に挙げ、行政の暴走による私権制限を防ぐための改憲案は立憲民主主義を掲げる立憲民主党の理念にも合致する方向性なのだから、立憲民主党も賛成してくれるのではと思っていた、と北神氏は語る。

 実際に、立憲民主党は前の国会では立憲民主党は参議院の緊急集会の機能を衆議院に全部持たせるスーパー緊急集会のような改正案を作ろうとしていたが前の国会と幹事が変わって、対応が一変し動きが一切なくなってしまった、と北神氏は残念がりながらも、与野党を超えて憲法改正を議論していくこと、また立憲民主党の中で憲法観のしっかりした議員を説得していくことへの意欲を強く滲ませた。

※有志の会…衆議院に存在する旧民主党出身保守系無所属による院内会派。吉良州司、北神圭朗、緒方林太郎、福島伸享の4名が所属しており、この4名はいずれも民主党で初当選。北神氏、緒方氏、福島氏はその後、希望の党を経て無所属に、吉良氏は旧国民民主党と旧立憲民主党の再編の際に無所属となった。

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